【全農家対象】県内でのツマジロクサヨトウの発生について

令和2年6月17日,石井町の飼料用トウモロコシにおいて,ツマジロクサヨトウ幼虫の発生と食害が確認されました。昨年9月には,フェロモントラップによる調査で成虫の発生が確認されていますが,農作物への加害は今回が初確認とのことです。

 

長距離移動できることもわかっているため,今後徳島県全体に被害が増加する可能性もあります。

 

そこでこの記事では,

 

・ツマジロクサヨトウとは?

・私たち農家はどう予防すればいいの?

 

を現在農林水産省から出ている情報などをもとに,ポイントを押さえて書いていきます。

 

事前知識として,ぜひ頭に入れておいてください。

 

※ツマジロクサヨトウが発生してしまった,それっぽい虫がいるという場合には吉野川農業支援センター,または徳島県病害虫防除所に速やかに御連絡ください。

 

 

ツマジロクサヨトウとは?

ツマジロクサヨトウは、南北アメリカ原産の農業害虫で、とうもろこし、ソルガムさとうきび、野菜類等、80種類以上の作物に被害を与えること、1世代で500km、1晩で最大100km移動するなど、長距離飛翔することが知られている。

本種は暖地に適応した種(南北アメリカ大陸の熱帯~亜熱帯原産)であり、熱帯では年4~6世代発生する。南北アメリカでは毎年夏季に成虫が移動・分散するが、暖地を除く地域では越冬することはできない。

幼虫が植物の葉、茎、花並びに果実を加害する。若齢幼虫は葉を裏側から集団で加害し、成長すると加害しながら分散する。

 参照:ツマジロクサヨトウに関する情報:農林水産省

 

抑えておいてほしいポイントは以下の4点です。

 

・80種類以上の作物に被害を与えること

・1世代で500km,1晩で最大100km移動するなど,成虫が長距離飛翔すること

・暖地に適応した種であること

・若齢幼虫は葉を裏側から集団で加害し,成長すると加害しながら分散すること

 

これらのことから,これから徳島県全体に被害が増加する可能性があるのではないかと指摘されています。

 

ツマジロクサヨトウの見た目、特徴

ツマジロクサヨトウの幼虫、成虫の見た目、特徴は以下のようなものです。

ツマジロクサヨトウ 幼虫

ツマジロクサヨトウ 成虫

 

ツマジロクサヨトウが出たらどんな被害になる? 

本種は広食性の害虫であり、経済的に重要な栽培種であるとうもろこし、いね、ソルガムさとうきび、わた及びその他野菜類に大きな被害をもたらす( CABI, 2019)。特にイネ科を好み、野生及び栽培されているイネ科植物の食害が報告されている( CABI, 2019)。

参照:ツマジロクサヨトウに関する情報:農林水産省

 

アメリカの調査では,スイートコーン1株あたりにツマジロクサヨトウの発生密度が0.2~0.8頭であっても、収量が5~20%低下するという報告があります。

また,ガーナ及びザンビアの生産者からの報告では、アフリカでのツマジロクサヨトウによるとうもろこしの減収量が4割にものぼったということです。

 

もし徳島県で発生した場合、同じように大きな被害になるのではないかと考えられます。 

 

ツマジロクサヨトウによる被害写真

 

次に,今(2020/6月現在)農林水産省から発表されている4種類の作物の被害写真を張っておきます。

 

「もしかしたらツマジロクサヨトウ?」というときの参考にしてください。

 

飼料用トウモロコシ

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スイートコーン

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サトウキビ

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水稲

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 参照:ツマジロクサヨトウに関する情報:農林水産省

 

ツマジロクサヨトウの防除方法は?

「危険な害虫であることはわかった。でも私たち農家はどうすればいいの?」と思われているのではないでしょうか。

 

ツマジロクサヨトウの防除方法は、

 

・生産ほ場の定期的な見回りによる早期発見

・発生が確認された際の早期防除

 

の2点です。

 

「事前にできる予防があるならやるんだけどなぁ」という農家さんもいらっしゃるかもしれませんが,現在,事前にできる予防方法はなく,加害があった後の防除方法となります。

 

生産ほ場の定期的な見回りによる早期発見

生育初期に幼虫の食害を受けた場合,被害が大きくなると考えられるため,ほ場を定期的に見回り早期発見・早期防除に努める。

参照:ツマジロクサヨトウの発生にご注意ください!|徳島県ホームページ

 

発生が確認された際の早期防除

本虫による加害が確認された場合,植物防疫法第29条第1項に基づく措置を行うこととし,加害が確認された作物ごとに選定した薬剤による散布を行う。

参照:ツマジロクサヨトウの発生にご注意ください!|徳島県ホームページ

 

散布に当たっては、新葉の葉鞘基部に潜り込んでいる幼虫に届くよう、株の上部までしっかりと散布する。また、老齢幼虫や作物の内部に潜り込んでいる幼虫には農薬の効果が低くなるので、本種の活動が活発になる早朝に、若齢幼虫や葉の表面にいる幼虫に対して、農薬を散布することが望ましい。
粒剤は、防除効果が現れるまで時間を要することが多いため、粒剤を施用したほ場において発生が続く場合には、速効性のある農薬による 追加散布を行う。

 参照:ツマジロクサヨトウに関する情報:農林水産省

 

※ツマジロクサヨトウに使える農薬一覧

https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/attach/pdf/tumajiro-115.pdf

 

使える農薬一覧に記載されている希釈倍率,使用方法,使用時期,散布量,回数を守ることで,出荷停止等,流通に支障が出ることはありません。

 

「それっぽい虫がいる」

「ツマジロクサヨトウが発生してしまった」

「加害されてしまったから農薬をまきたいんだけどどれがいいかわからない」

という場合には,吉野川農業支援センター(0883-26-3971),または徳島県病害虫防除所(088-674-1954)に速やかに御連絡ください。