青色申告特別控除とは?【65万円の控除を受けるには?】

キャッチ画像

青色申告の特別控除とは。

知り合いの農家に65万円得すると聞いたが,具体的にどういうことなのか。また,青色申告特別控除を受けるにはどうすればいいのか。

このような悩みにお答えします。

青色申告特別控除とは?

青色申告特別控除とは,最大65万円を所得から控除できる制度のことです。

 所得とは,野菜や果物を販売して得られた「収入」から,農薬や肥料、人件費などの「必要経費」を差し引いた金額のこと。

この「所得」から「控除額」を引いたものが「課税所得金額」。

所得税は,この課税所得金額が大きければ大きいほど高くなる仕組みとなっています。

青色申告特別控除を利用することで,課税所得金額を抑えることができるので,結果的に節税することができるのです。

白色申告と青色申告ではどれくらい所得税に差があるの?

節税できるといわれても,いまいちピンときていない方も多いはず。

そこで,以下の条件である農家Aさんの所得税額が,控除なしの白色申告をした場合と,65万円控除のある青色申告をした場合で,どのくらい所得税額に差が生じるのか計算していきます。

農家事例

白色申告の場合

・ 課税所得金額の計算

700万円(総収入) ー 350万円(必要経費) ー 48万円(基礎控除

= 302万円

 

所得税の計算

302万円(課税所得金額) × 10% ー 97,500円

= 204,500円(白色申告の場合の所得税額)

 

青色申告(65万円)の場合

・ 課税所得金額の計算

700万円(総収入) ー 350万円(必要経費) ー 48万円(基礎控除) ー 65万円(青色申告特別控除)

= 237万円

 

所得税の計算

237万円(課税所得金額)× 10% ー 97,500円

= 139,500円(青色申告(65万円)の場合の所得税額)

結果

204,500円(白色申告の場合の所得税額)

139,500円(青色申告(65万円)の場合の所得税額)

 

204,500円 ー 139,500円

= 65,000円

 

上記の農家Aさんの場合,控除なしの白色申告をした場合と,65万円控除のある青色申告をした場合では,所得税額に65,000円もの差があることがわかりました。

適用するかしないかでこれだけ納税額に違いが出る青色申告特別控除。ぜひ活用したいところです。

青色申告特別控除を受けるための条件とは?

適用要件

青色申告特別控除には65万円の控除だけでなく,55万円,10万円の控除と3種類あります。

それぞれ適用要件が違いますので,何をしなければならないのか?をご説明していきます。

55万円/65万円の控除を受けるための条件

まず,55万円の控除を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。

(1)不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。

(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し,この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。

引用:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

 要するに,「不動産所得or事業所得を得られる事業を行い,複式簿記で記帳し,期限内に確定申告を行えばいいですよ。」ということです。

これに加え,以下のどちらかの条件を満たすことで,65万円の控除を受けられるようになります。

①その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について,電子帳簿保存(下記《参考》参照)を行っていること。

②その年分の所得税の確定申告書,貸借対照表及び損益計算書等の提出を,確定申告書の提出期限までにe-Tax国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

 引用:No.2072 青色申告特別控除|国税庁 

電子帳簿保存とは?

電子帳簿保存とは,一定の要件の下で帳簿を電子データのまま保存する制度です。

原則,帳簿書類は紙でプリントアウトして保存する必要がありますが,要件を満たせばプリントアウトせずにデータで保存することが認められています。

保存要件は以下の通りです。

  • 記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できること
  • 通常の業務処理間を経過した後の入力履歴を確認できること
  • 電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において,相互にその関連性を確認できること
  • システム関係書類等(システム概要書,システム仕様書,操作説明書、事務処理マニュアル等)の備え付けること
  • 保存場所に,電子計算機,プログラム,ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作マニュアルを備え付け,記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること
  • 取引年月日,勘定科目,取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること
  • 日付又は金額の範囲指定により設定できること
  • 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

 引用:はじめませんか、帳簿書類の電子化!(PDF/1,042KB)

65万円の青色申告特別控除では,仕訳帳と総勘定元帳について電子帳簿保存を行う必要があります。

また,電子帳簿保存を行うには申請書を税務署に提出する必要があります。提出期限は帳簿をつけ始める3か月前までです。

e-Taxとは?

 e-Taxとは,ネット上で所得税贈与税といった税金の申告,申請・届出等が行える国税庁のシステムです。

本来税務署に行って行う必要のあった各種申告や納税を,自宅やオフィスにいながら完了することができるため,効率的に作業を進めることができます。

【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

10万円の控除を受けるための条件

 上記の条件を満たさない青色申告者は,控除額が10万円になります。

具体的には,

  • 不動産所得or事業所得を得られる事業を行っていない
  • 複式簿記で記帳していない
  • 期限内に確定申告を行っていない

青色申告者です。

手軽に65万円の青色申告特別控除を受けるには?

 「55万円/65万円の特別控除を受けるのはすごく大変そう…」と感じた方も多いのではないでしょうか。確かに自分で手書きで記帳するのであれば大変な労力になりますが、手軽に済ませる方法もあります。

税理士に確定申告をお願いする

 1つは,自分で確定申告をせずに外部の税理士にお願いするという方法です。

自分で申告をしないため手間が省けるほか,正確に申告してくれる,何か間違いや指摘事項があって税務調査があったとしても立ち会って対応してくれるなど,多くのメリットがあります。

デメリットは費用がかかること。確定申告のみか記帳まで行ってもらうかで費用は大きく変わりますが,コストがかかることは避けられません。また,税理士に任せきりになるので自分で確定申告をしている人と比較すると経理や経営に関する知識がつきにくいことも挙げられます。

会計ソフトを利用する

もう1つは,会計ソフトを利用して確定申告を行う方法です。

日ごろの記帳は自分で行わないといけませんが,それさえ行っておけば,確定申告に必要な書類は会計ソフトが自動で作成してくれます。後はできた書類を提出するだけなので,大きな手間はかかりません。

書類作成が自動とはいえ多少の簿記の知識が必要になります。しかし,今後長く使う知識になるため覚えておいて損はないでしょう。

会計ソフトの利用料はかかってしまいますが,税理士にお願いすることを考えると大幅に安く済みますよ。

吉野川農業支援センターでは、毎年簿記セミナーを開催しています

 吉野川農業支援センターでは,「ソリマチ農業簿記」を使ったパソコン農業簿記セミナーを毎年開催しています。

「ソリマチ農業簿記の使い方がよくわからない」
「どう記帳していいかわからない」

等,簿記に関することでお悩みがありましたら,ぜひパソコン農業簿記セミナーにご参加ください。

 ※下記は令和2年度の簿記セミナーの日程です

令和2年度 農業簿記セミナー開催のお知らせ - 吉野川農業支援センター

まとめ

今回は,65万円の青色申告特別控除を受けるのと受けないのとではどれくらい納める税額に差が出るのか,青色申告特別控除の適用条件などを解説してきました。

今回のポイントは以下の通りです。

  • 65万円の青色申告特別控除を受けると,大きく所得税額を節税できる
  • 青色申告特別控除には3種類あり,それぞれ適用条件が違う
  • 青色申告特別控除は一見難しそうだが,自分で行うことも可能

ルールさえ守れば誰でも受けられ,節税額も大きい制度ですので,個人事業主の農家さんはぜひ活用しましょう。